ロッキー藤井の失敗劇場⑧

「特許を取れば守れる」と思ったら、
通用しなかった

何度倒れても、また立ち上がる。

皆さん、こんにちは。藤井薫です。

何度倒れても、また立ち上がる。ロッキー藤井です。

今日は、製麺機メーカーとして技術を守ろうとして、私が学んだ失敗の話です。

製麺機メーカーにとって、独自の技術は大切な財産です。長い時間と費用をかけて開発した技術を、簡単に真似されたくはありません。

そこで私は、「特許を取れば、自社の技術を守れる」と考えていました。

特許を取得しておけば、
他社はその技術を勝手に使えない。

私は、そう信じていたのです。

ところが――。現実は、それほど単純ではありませんでした。

第1幕|ライバルメーカーから警告が来た

守るために取った特許が、
思わぬ形で返ってきた。

ある日、ライバルメーカーから、「御社の製麺機は、当社の特許を侵害している」という指摘が来ました。

私は驚きました。すぐに弁理士へ相談し、相手の特許を詳しく調べました。

その結果、当社の製麺機は、先方の特許を侵害していないことが分かりました。そこで、その根拠をまとめ、正式に回答しました。

しかし、調査を進めるうちに、思いがけないことが分かりました。

調査の結果先方の製麺機の方が、
当社の特許を侵害していた。

こちらが疑われたはずなのに、立場が逆になっていたのです。

第2幕|本当は、以前から気づいていた

気づいていたのに、
私は何も言わなかった。

実は私は、それ以前から、「先方の機械は、当社の特許を使っているのではないか」と感じていました。

しかし、製麺機メーカーは、それほど大きな業界ではありません。狭い業界の中で、わざわざ争いを起こす必要はない。私はそう考え、何も言わずにいました。

ところが、先方から当社に対して特許侵害を指摘してきました。それなら、こちらも黙っているわけにはいきません。

私は先方に、「御社の製麺機が、当社の特許を侵害しています」と警告しました。

先方の返事

「今後、その特許は使いません」

これで一件落着。私は、そう思いました。

第3幕|今度は、機械から名盤が消えた

機械はある。
しかし、どこが作ったのか分からない。

ところが、その後も先方は、機械にメーカー名を示す名盤を貼らず、どこが製造したのか分からない状態にして出荷していました。

機械はある。しかし、どこが作ったのか分からない。

メーカーになっていたのです(笑)。

そのとき私は、思い知りました。

特許を取っただけでは、技術を完全に守ることはできない。

「特許を取れば安心だ」と思っていた私の考えは、甘かったのです。

第4幕|それでも、特許を取り続けた

特許は、武器から
「盾」へ変わった。

だからといって、特許に意味がないわけではありません。この出来事以来、当社は特許を取り続けました。

ただし、その目的が変わりました。

以前のイメージ

相手を攻撃する武器

自社の技術を使われないようにするもの。

気づいたこと

守りにも役割がある

特許を持つ意味を、別の角度から考え直しました。

その後の目的

自社を守る盾

「当社の特許を侵害している」と指摘されないために取る。

つまり、当社にとって特許は、相手を攻撃する「武器」ではなく、自社を守るための「盾」になりました。

私はこれを、防衛特許と考えています。

第5幕|本当に守るべきものは、技術ではなかった

製麺機を守るより、
お客さまを守る。

しかし、特許だけでは、会社の本当の強みを守れません。どれほど優れた製麺機を作っても、いつか似たものが出てきます。

部品も、構造も、機能も、時間がたてば研究されます。

では、何を作れば真似されないのか。

私たちがたどり着いた答え

365日メンテナンス

製麺機は、お客さまにとって商売の生命線です。機械が止まれば、麺が作れません。麺が作れなければ、その日の営業ができなくなることもあります。

だから私たちは、土曜日でも日曜日でも、年末年始でも、お客さまが困ったときに対応できる体制を作りました。

機械の役割

毎日の営業を支える

製麺機が止まれば、麺づくりも営業も止まってしまう。

私たちの約束

365日対応する

困った瞬間に、曜日や時期を理由にしない。

真似されにくいもの

覚悟と仕組み

製品は似せられても、信頼の積み重ねは簡単に真似できない。

製麺機そのものは、真似できるかもしれません。しかし、365日、お客さまの困りごとに対応し続ける覚悟と仕組みは、簡単には真似できません。

守る対象を間違えていた

技術を守る会社から、
お客さまの商売を守る会社へ。

振り返ると、当時の私は、「どうすれば技術を守れるか」ばかり考えていました。

しかし、本当に守るべきものは、技術だけではありませんでした。

私たちが守るべきだったのは、
製麺機を使って商売をしている、
お客さまの営業と生活だった。

特許は、自社の技術を守るために必要です。しかし、お客さまから選ばれ続ける会社になるためには、特許だけでは足りません。

商品・技術
サービス
社員の姿勢
長年積み重ねた信頼

それらすべてが組み合わさって、初めて簡単には真似できない会社になります。

今日の根っ子|根っ子学から振り返ると

「守る対象」を変えたら、
新しい仕組みが生まれた。

「特許を取れば守れる」。これは、当時の私の強い思い込みでした。目に見える技術と権利を守れば、会社も守れると思っていたのです。

しかし、その奥にある本当の根っ子は、「お客さまの商売を止めてはいけない」という使命でした。

根っ子の問い守る対象を、
自社の技術からお客さまへ。

視点を変えたとき、365日メンテナンスという、簡単には真似できない仕組みが生まれました。

失敗して初めて、自分が守るべきものを間違えていたことに気づいたのです。

あなたの会社では?

守ることに一生懸命で、
本当に守る相手を見失っていないか。

あなたの会社では、商品や技術を守ることに一生懸命になり、本当に守るべきお客さまを見失っていないでしょうか。

お客さまが本当に困る瞬間は、いつか。
その時、誰が、どう支えるか。
競争相手に真似されにくい信頼は何か。
自社の強みは、技術だけになっていないか。
真似されない技術を作るより、
真似できない信頼を積み重ねる。

特許だけでは守れなかったからこそ、私たちは、もっと強いものを作ることができました。

読者の皆さんへ

あなたの会社の
「365日メンテナンス」は何でしょうか。

それは、休日にも対応する仕組みかもしれません。お客さまの不安を先回りして取り除くことかもしれません。技術の外側にある、信頼の形かもしれません。

もし思い当たることがあれば、
このメールにちょっと返信してみてください。

格好のいい答えでなくて結構です。
「守る対象を考え直してみます」だけでも大丈夫です。

「守る対象」を考え直してみる →

発行人

ロッキー藤井

大和製作所創業者・根っ子学®創始者。約50年間の経営、家族、失敗、事業承継の経験から、人や会社を内側から動かす「見えない根っ子」を言葉と構造で見えるようにし、自然な成長につなげる研究と実践に取り組んでいます。

何度倒れても、また立ち上がる。
失敗の使い道は、後から変えられます。

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