ロッキー藤井の失敗劇場②
パートさんだけで回る
「夢の店」の裏で、
社長が深夜まで皿洗いを
していた話
何度倒れても、また立ち上がる。
皆さん、こんにちは。藤井薫です。
前回から始めた「ロッキー藤井の失敗劇場」。ここでは、私の成功談ではなく、「今だから笑える、私の失敗」を包み隠さずお話ししています。
今回も、坂出駅に出したうどん店「亀城庵」での失敗です。
「パートさんだけで繁盛店をつくろう!」
これが実現できれば、新しくうどん店を始める人たちにとっても、「これなら自分にもできる!」というモデルになる。私は本気でそう考えていました。
第1幕|夢の店をつくる
「これは、うまくいく」
かなり自信がありました。
私は製麺機メーカーの社長です。麺のことなら分かっている。たくさんの繁盛店も見てきた。商品づくりにも自信がある。
だから、パートスタッフだけで店を回す仕組みをつくれば、うどん店を始めたい人のモデルになると思いました。
そして実際、店を開けると――
お客様が、次々に来てくださったのです。
店は大繁盛。私は心の中で、「ほら、やっぱり私の考えた通りだ」くらいに思っていました。すっかり有頂天です(笑)。
第2幕|スタッフが帰った後
「お疲れさまでした!」の後に、
本当の仕事が始まった。
夕方になると、「お疲れさまでした!」とパートスタッフの皆さんが帰っていきます。その後、店内に一人残っている男がいました。
社長の私です。
大量の洗い物
お客様が帰った後に、食器と厨房の片付けが待っていました。
翌日の準備
仕込みや準備を終える頃には、夜中の2時、3時です。
また仕込み
少し寝たら、早朝から再び店に戻らなければなりません。
睡眠時間は、毎日3時間程度。それが1週間ほど続いた頃には、「俺は一体、何でこんなことを始めてしまったんだ……」と、本気で思っていました(笑)。
「パートさんだけで回る夢の店」をつくったはずなのに、最後に全部引き受けていたのは、社長の私だったのです。
パートさんだけで回る店ではなく、
最後は社長が全部やる店(笑)。
夢の仕組みをつくったつもりが、社長が一番忙しい仕組みになっていました。
第3幕|私は何屋だったのか
昼はうどん屋、夜は皿洗い。
それでも私は社長でした。
さらに困ったことがありました。当時の私は、亀城庵だけを経営していたわけではありません。
大和製作所と讃匠。二つの会社の社長でもありました。
しかし、亀城庵から離れられない。そこで、どうしたか。
うどん店の厨房から、
二つの会社へ指示を出していました。
来客との商談まで、亀城庵の店内です。昼間はうどん店。夜中は後片付け。その合間に二つの会社の社長。
今振り返ると、「私は一体、何屋だったのでしょう(笑)」という状態です。
しかも、数日や数週間の話ではありません。最初の1年間、私はほとんど店から離れることができませんでした。
失敗の奥にあった根っ子
成功体験が、
私の目を曇らせていた。
なぜ、こんなことになったのでしょうか。
私は製麺機メーカーとして、たくさんの麺店を見てきました。製造業の経営もしてきました。
仕組みをつくる。標準化する。良い商品をつくる。誰がやっても、一定の品質が出るようにする。
私は、それで成功してきました。だから、無意識のうちに思っていたのです。
この確信が、亀城庵での判断の土台になっていました。
この確信は、もともと悪いものではありません。むしろ、その確信があったからこそ、私は会社をつくり、新しいことに挑戦し、何度も決断することができました。
私を支えてくれた、大切な根っ子でもあります。
環境が変われば、使い方も変わる
同じ根っ子でも、
同じ結果になるとは限らない。
製造業で私を助けてくれた成功体験と確信を、そのまま飲食店経営に持ち込んでしまった。そこに、私の落とし穴がありました。
仕組み・標準化
手順を整え、誰がやっても一定の品質を出す。
毎日が予定外
お客様、スタッフ、採用、教育、接客。毎日違うことが起きる。
過去の答えを持ち込む
「前はこれで成功した」が、今の環境にも通じると思っていた。
実際に自分で飲食店を経営してみると、全く違いました。
お客様は予定通りに来てくれない。スタッフの動きも毎日違う。採用も、教育も、接客もある。
予定通りにいかないことが、
毎日起きる(笑)。
そこで私は、ようやく気づきました。
人間の目を曇らせるのは、
失敗体験だけではない。
成功体験も、ときには目を曇らせます。
「前はこれで成功した」「自分はこの方法を知っている」「これでうまくいくはずだ」。成功体験が大きければ大きいほど、それを疑うのは難しいものです。
本人にとって、それは「思い込み」ではありません。一度、成功によって証明された「正しい答え」だからです。
問題が起きた時、今の私が見るもの
「なぜ私は、
そう判断したのだろう?」
今の私は、経営上の問題が起きた時、数字や仕組みだけを見るのではなく、「なぜ私は、そう判断したのだろう?」と考えるようにしています。
私は、それらが今の判断や行動にどう影響しているのかを、「根っ子」まで掘って見るようになりました。
これが、私が経営問題を見る時に、表面だけで終わらせない理由です。
失敗が、後で宝物になった
頭ではなく、身体で知った
「飲食店経営」という現実。
当時は、本当に大変でした。でも、実際に自分で店に入り、1年間苦労したことで、「飲食店を経営するとは、こういうことなのか」ということを、頭ではなく身体で知りました。
これは、机の上では絶対に分からなかったことです。
その経験は、後の麺学校での経営講義に大いに役立ちました。
自分が夜中の2時、3時まで
皿を洗った経験から話せる。
「飲食店経営とは、こういうものです」と、本で読んだ話をするのではありません。自分の経験から話せる。これは大きな違いでした。
あの時は、「何でこんなことを始めてしまったんだ」と思っていました。でも今では、あの失敗がなければ、絶対に分からなかったことがあると思っています。
今日の根っ子
失敗は消せない。
でも、使い道は変えられる。
自分の中で何が働いていたのか。
そして、そこから何を学び、次にどう使うのか。
倒れたこと自体を、なかったことにはできません。でも、なぜ倒れたのか。そこから何を学ぶのか。そして、次にどう使うのか。これは変えられます。
だから、失敗は後から「宝物」に変えることができる。私はそう思っています。
今日の小さな実践
「昔うまくいったから」を、
一度だけ問い直す
商品でもいい。価格でもいい。採用でもいい。部下との接し方でもいい。家族との関わり方でもいい。
過去の成功を否定する必要はありません。その成功があったから、今があります。
でも、根っ子を大切にすることと、昔と同じ枝を伸ばし続けることは違います。
環境が変われば、
枝の伸ばし方は変えていい。
私の場合、それを教えてくれたのが――深夜2時、3時までの皿洗いでした(笑)。
読者の皆さんへ
あなたの「成功体験の落とし穴」も、
聞かせてください。
「昔うまくいったから」という理由だけで、
今も続けていることはありませんか?
もし思い当たったら、下のボタンから「成功体験」と一言お送りください。詳しい事情を最初から書く必要はありません。
秘密は守ります。一緒に、今の環境に合う枝の伸ばし方を考えてみましょう。
「成功体験」と一言送る →発行人
ロッキー藤井
大和製作所創業者・根っ子学®創始者。約50年間の経営、家族、失敗、事業承継の経験から、人や会社を内側から動かす「見えない根っ子」を言葉と構造で見えるようにし、自然な成長につなげる研究と実践に取り組んでいます。
何度倒れても、また立ち上がる。それが、ロッキー藤井です。
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