ロッキー藤井の失敗劇場④
製麺機を売ったら、
代金が羽毛布団になって
返ってきた話
何度倒れても、また立ち上がる。
皆さん、こんにちは。藤井薫です。
今日は、私が初めて韓国ビジネスに挑戦したときの話です。
大和製作所を創業して、10年が経つか経たないかの頃でした。
ある知人から、夢のある話が舞い込んできました。
「韓国へ製麺機を輸出しないか」
今でこそ、大和製作所の製麺機は世界70~80か国で使われています。しかし当時は、海外ビジネスなどまったく経験がありません。
そこへ突然、韓国から大型案件がやってきたのです。
私は心の中で思いました。
「いよいよ大和製作所も、世界へ羽ばたくときが来た!」
確かに羽ばたきました。
ただし、最後に大量に届いたのは、製麺機の代金ではなく、羽毛布団でした(笑)。
第1幕|鴨から始まり、製麺工場へ
話だけ聞けば、
無駄のない事業計画だった。
話を持ってきた知人は、韓国で鴨の養殖を指導していました。取引先は、韓国で羽振りのよい小型の新興財閥でした。
鴨を養殖し、食肉加工し、製麺工場をつくる。肉が取れ、羽毛が取れ、麺まで作る。
話だけ聞けば、まったく無駄のない事業計画です。
ただし後になって分かったのは、こちらが納めた製麺機の代金まで、羽毛になってしまう計画だったことです(笑)。
先方から求められたのは、大型の製麺機でした。当社では、まだ作ったことのない機械です。
私は燃えました。
新しい機械を開発し、
世界へ進出する。
夢がどんどん膨らんでいきました。このとき膨らんでいたのは、夢だけではありません。後で届く羽毛布団も、しっかり膨らんでいました(笑)。
第2幕|大型製麺機は完成した
機械は動いた。
しかし、商売は終わっていなかった。
私たちは苦労して、大型の製麺機を開発しました。そして、韓国へ納品しました。
機械が完成し、無事に動いたとき、私は大きな達成感を感じました。
「これで海外ビジネスへの道が開けた」
そう思いました。ところが、機械を納品した後、先方の会社の業績が急激に悪化しました。
代金の半分は、何とか現金で回収できました。しかし、まだ多くの代金が残っています。私は当然、残金も現金で支払ってもらえるものと思っていました。
現金では払えません
納品後に会社の業績が悪化し、残金の支払いが難しくなりました。
羽毛布団で支払います
製麺機を納めたら、代金の代わりに大量の羽毛布団が届いたのです。
夢だけは、ふかふか
世界へ羽ばたくはずが、倉庫には羽毛布団が積み上がりました(笑)。
第3幕|倉庫に積み上がる、ふかふかの売掛金
羽毛布団は温かい。
でも、私の懐は寒くなった。
やがて、大量の羽毛布団が届きました。
普通なら、羽毛布団は人を温かくしてくれるものです。しかし、倉庫に積み上がった羽毛布団を見るたびに、私の懐は寒くなりました(笑)。
社員への給与日もやってきます。しかし社員に、「今月の給与は、現金ではありません。羽毛布団です」とは言えません。
電気代も家賃も、羽毛布団では払えません。私は必死で、羽毛布団の販売先を探しました。
昨日までは、「世界へ製麺機を売るぞ!」と言っていた社長が、今日は、「羽毛布団はいりませんか?」と言って歩いているのです。
私は一体、何屋だったのでしょう(笑)。
ここで、痛いほど学んだこと
売上と現金回収は、
まったく別物だった。
商品を納めたことと、商売が終わったことは同じではありません。
案件をもらう
注文が来た。大きな機会がやってきた。
機械を開発して届ける
機械は完成し、無事に動いた。売上も計上した。
現金で回収する
代金を現金で回収するまで、商売は完了していない。
当時の私は、海外から大型の注文が来たことに舞い上がっていました。
「知人からの紹介だから安心だろう」「これをきっかけに海外展開できる」そんな期待が先に立ち、相手の支払い能力や、万一の場合の回収方法を十分に確認できていませんでした。
注文をもらったことと、
お金を回収したことは違う。
売上計上は、商売の一つの通過点です。支払条件と回収方法まで確認して、初めて取引全体が見えてきます。
今日の根っ子|私の目を曇らせたもの
夢が強すぎると、
見たくない事実が見えなくなる。
この失敗の奥にあったのは、相手を信用したことだけではありません。私の中にあった、「早く海外へ進出したい」という強い願望です。
夢や挑戦心は、大切な光の根っ子です。しかし、夢が強くなりすぎると、自分に都合の悪い情報が見えなくなることがあります。
「この取引は大丈夫だろうか」という小さな不安よりも、「これで世界へ出られる!」という期待の方が勝ってしまったのです。
根っ子学では、良い根っ子と悪い根っ子を単純に分けません。同じ根っ子でも、強さと使い方によって、人生を助けることもあれば、問題を生むこともある。
光の根っ子も、使い方を誤れば、影をつくります。私はそのことを、大量の羽毛布団から教えてもらいました。
第4幕|失敗は消せない。しかし、使い道は変えられる
あの羽毛布団は、
場所を取る授業料だった。
羽毛布団では給与も払えず、資金繰りには本当に苦労しました。当時は笑える話ではありません。
しかし、この失敗があったからこそ、私は海外取引における信用確認、契約、支払条件、代金回収の重要性を身体で学びました。
その後、大和製作所は世界70~80か国へ製麺機を届ける会社になりました。最初の海外ビジネスで、もし何の問題も起きなかったら、私はもっと大きな取引で、さらに深刻な失敗をしていたかもしれません。
信用を確認する
紹介や期待だけで安心せず、相手の支払い能力を確認する。
支払条件を明確にする
いつ、何を、どの方法で支払うのかを、事前に決めておく。
回収までが商売
納品後の入金まで確認して、初めて取引を完了させる。
こんな犠牲を払っても、その後の韓国ビジネス、海外ビジネスを止めなかったのは、納品した製麺機のメンテナンスのためでした。
夢を諦める必要はありません。しかし、夢を実現するためには、現実を見る目も必要です。
事実を一つ確認する。
見たい未来ではなく、目の前の支払い能力・契約・回収方法を確認します。
商品を販売したときは、代金の回収方法まで確認してください。そうしなければ、皆さんの会社にも、ある日突然、大量の羽毛布団が届くかもしれません(笑)。
読者の皆さんへ
夢を追うからこそ、
現実を見る目を持つ。
「この人なら大丈夫」
そう思った時ほど、一度だけ立ち止まる。
海外進出でも、新規事業でも、大きな取引でも、期待が膨らむほど確認を丁寧にする。その一呼吸が、未来の資金繰りを守ることがあります。
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ロッキー藤井
大和製作所創業者・根っ子学®創始者。約50年間の経営、家族、失敗、事業承継の経験から、人や会社を内側から動かす「見えない根っ子」を言葉と構造で見えるようにし、自然な成長につなげる研究と実践に取り組んでいます。
失敗は消せない。でも、その失敗の使い道は変えられる。
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