FAMILY BUSINESS DIALOGUE
毎日会っているのに、
親子は一番大切な話をしていなかった。
事業承継を止めていたのは、株でも税金でもない。
「親子の沈黙」だった。
最近、あるファミリービジネスの経営者と話をしていて、私は一つのことに気づきました。
その会社には後継者がいます。すでに次世代が経営の中心に入り、毎日のように親子で顔を合わせています。
仕事の話はいくらでもしている。ところが――
一番大切な話だけを、していなかったのです。
本当は、確かめなければならないこと
- この会社を10年後、どうしたいのか
- 父親は、本当は何を残したいのか
- 息子は、本当はどんな会社をつくりたいのか
- 何が一番不安で、何なら手放せるのか
- お互いを、本当はどう思っているのか
こういう話になると、なぜか話せない。私は「これは、この親子だけの問題ではない」と思いました。私自身も同じだったからです。
WHY SILENCE HAPPENS
親子だからこそ、
本音が話せない
親子には、会社に入るずっと前から積み重ねてきた歴史があります。父親にとって息子は、後継者である前に「自分の子ども」。息子にとって父親は、会長である前に「自分の父親」です。
「もっと会社を伸ばしてほしい」
経営の話をしただけでも、息子の心には違う意味で届くことがあります。
「会社だけでなく、家庭も大切にしたい」
自分の人生観を話しただけでも、父親の心には違う意味で届くことがあります。
余計なことを言って関係を悪くするくらいなら、「この話はしないでおこう」となる。表面上は平和です。しかし、この「親子の沈黙」が、事業承継を止める大きな問題になるのではないでしょうか。
BOWEN FAMILY SYSTEMS THEORY
毎日会っている。
だから大丈夫、ではない。
精神科医マレー・ボーエンが体系化した家族システム理論では、家族を、互いに影響し合う一つの感情システムとして捉えます。
その概念の一つが「情緒的遮断(Emotional Cutoff)」です。絶縁だけを意味しません。物理的には接触しながら、敏感な話題を避けて感情的な接触を減らすことも含まれます。関係が良く見えても、問題は解決ではなく休眠している場合があります。
大切なのは「どれだけ話しているか」ではなく、「一番話しにくいことを話せているか」。
THE UNSAID WORDS
この言葉を、
親子で言えるでしょうか
ここまで話せて初めて、本当の事業承継の話が始まるのではないでしょうか。
つながりながら、自分の考えを持つ
ボーエン理論には「自己分化」という概念もあります。家族とのつながりを保ちながら、相手の感情に飲み込まれず、自分の立場を持つ力です。意見が違うことと、親子関係が壊れることは、本来は別の問題です。
事業承継の研究でも、対話は中心課題です
国内外の研究では、先代と後継者のコミュニケーション不全が承継を妨げ、家族関係の中で行われる知識承継にも影響することが論じられています。
事業承継コミュニケーションの国内研究 / Communication Traps / 2025年の知識承継レビュー
理論の説明:Bowen Center「Emotional Cutoff」 / 「Differentiation of Self」
MY OWN SILENCE
私自身も、
できていなかった
ここまで書いて、偉そうなことを言える立場ではありません。私自身も、息子と本当に大切な話が十分できていたかと問われれば、できていなかったと思います。
仕事の話、会社の話、注意、指示はしていました。しかし、「お前は本当は、どんな人生を送りたいんだ」「どんな会社なら、お前自身がワクワクして経営できるんだ」と、どれほど真剣に聞いていただろう。
反対に私も、「私は何が怖いのか」「なぜ任せられないのか」「本当は息子に何を期待しているのか」を、きちんと言葉にして伝えていただろうか。
振り返ると、私にも「親子の沈黙」がありました。だからこそ、この問題を他人事とは思えません。
「承継の沈黙」
親子の仲が悪いわけではない。毎日会い、普通に話している。しかし、会社の未来について、一番大切な本音だけは話していない状態。
沈黙には音がありません。大喧嘩なら問題が見えます。しかし沈黙は、問題がないように見える。だから5年、10年と、そのままになることがあります。
THREE QUESTIONS
後継者へ、
この3つを聞けますか?
「この会社を10年後、どんな会社にしたい?」
答えが自分の考えと違っても、途中で口を挟まずに聞いてみる。
「会社について、一番不安に思っていることは何?」
解決策をすぐに言わず、まず最後まで聞く。
「私に言いたくても、言えなかったことはある?」
聞きたくない答えが返ってきても、そこから本当の対話が始まります。
WHAT NEKKOLOGY® MAKES VISIBLE
誰が悪いかではなく、
何を守ろうとしているのか
根っ子学®が扱いたいのは、経営者と家族の中にある、目には見えない内的構造を見えるようにすることです。
なぜ父親は任せられないのか。なぜ息子は本音を言えないのか。なぜ同じ話で喧嘩になるのか。なぜ、大切な話ほど避けてしまうのか。
誰が悪いかを決めるのではありません。誰かを無理やり変えるのでもありません。まず、「本当は何を守ろうとしているのか」を見えるようにする。
父親の根っ子。息子の根っ子。そして、何代にもわたって受け継がれてきた会社と家族の根っ子。それが見えれば、親子自身が「これからどうしたいか」を選べるようになります。
ONE HONEST CONVERSATION
最後に「会社の未来」を、
本音で話したのはいつですか?
毎日会っていることと、
本音でつながっていることは違う。
「息子と話したい。でも切り出し方が分からない」「話すと必ず喧嘩になる」「後継者の考えが分からない」「自分が何を手放せないのか整理できていない」
そんな方は、詳しい事情を書かなくて大丈夫です。まず「親子の対話」と一言だけお送りください。
「親子の対話」と一言送る →事前にいただいた内容やご相談内容を、ご本人の了承なく外部へ公開することはありません。
AUTHOR
ロッキー藤井(藤井 薫)
大和製作所創業者・根っ子学®創始者。約50年間の経営と、自身の事業承継経験を基に、人、家族、会社、承継を内側から動かす「見えない根っ子」の研究と実践に取り組んでいます。
平常心と感謝で生きる!経営と家族の「見えない根っ子」を、
毎週、一緒に見つめる。
事業承継、後継者との対話、繰り返す経営問題。約50年間の経営経験から得た、会社と家族を自然に整える視点をお届けします。
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