会社を大切に守ってこられた経営者へ
―― これは、あなたの会社を外から裁く手紙ではありません。
同じ痛みを通った、一人の創業者からの手紙です。 ――
この手紙を読み始めた瞬間、もしかすると、こう思われたかもしれません。
「また、事業承継の話か」
「家族の問題を、他人に分かるはずがない」
「結局、相談してくださいという営業ではないのか」
そう感じられたなら、その感覚はとても自然です。
私自身も、同じ立場なら、きっと身構えたと思います。
家族で会社をやっている経営者は、外から見るよりずっと孤独です。
社員の前では強くいなければならない。
取引先の前では不安を見せられない。
金融機関には数字で説明しなければならない。
けれど、本当に苦しいのは、そこではありません。
いちばん大事な家族と、いちばん大事な話ができない。
後継者に任せたい。
でも、任せきれない。
口を出せば嫌がられる。
黙って見ていれば不安になる。
こちらにも言い分があり、相手にも言い分がある。
表面では、経営方針の違いに見えます。
しかし奥では、長い年月で積もった親子の感情が絡み合っている。
そこに触れようとすると、話し合いではなく、いつの間にか傷つけ合いになってしまう。
このような状態なら、すぐに「相談したい」と思えなくても当然です。
むしろ、「これ以上、家族の問題を掘り返したくない」と感じる方が自然かもしれません。
私は、小さな会社を一代で立ち上げ、五十年経営してきました。
製麺機の世界で、職人の勘を数値化し、世界八十か国以上に製品を届けるところまで会社を育ててきました。
仕事の問題なら、たいていのことは乗り越えられる。
そう思っていました。
ところが、自分の家族との関係だけは、どうにもならなかったのです。
私には、怒りっぽいところがありました。
癇癪を起こし、正しさで押し、相手を変えようとしてきました。
それは、いま思えば父にも、祖父にもあったものです。
三代にわたって受け継がれてきた、目に見えない「根っ子」でした。
当時の私は、それを性格だと思っていました。
経営者だから厳しくて当然だ。
会社を守るためには仕方がない。
そう自分に言い聞かせていました。
しかし、事業を息子に引き継ぐ時期になって、その根っ子が一気に表に出ました。
任せたいのに、任せきれない。
息子は私のやり方を受け入れられない。
私は息子の不安を分かろうとせず、息子も私の孤独を分かれなかった。
財務や税務の専門家は助けてくれました。
制度や株式や節税の話は、いくらでも相談できました。
しかし、親子の心のもつれを扱える人は、どこにもいませんでした。
あるとき、私は家族に謝りました。
相手が悪いのではなく、自分の中にある根っ子が、家族を苦しめていたのだと気づいたからです。
それから、家族で毎週、卓を囲むようにしました。
会社の数字を責め合う時間ではありません。
誰が正しいかを決める時間でもありません。
お互いの心の根っ子を、ただ見つめ合う時間です。
もちろん、最初からうまくいったわけではありません。
ある息子は、正直にこう言いました。
「自分の足りないところばかり見えて、この時間はつらい」
その言葉を聞いたとき、私は大切なことを学びました。
家族を変えようとすると、家族は閉じる。
家族の強みを見つけようとすると、家族は少しずつ開く。
そこからやり方を変えました。
欠点を探すのをやめました。
一人ひとりの中に残っている良い根っ子に、光を当てるようにしました。
私はエンジニアです。
かつて麺づくりの世界で、職人の「見えない勘」を数値とレシピに変え、誰がやっても同じ味を出せる技術をつくりました。
その同じ考え方を、今度は家族の心に使いました。
見えない心の状態を、七つの根っ子として見える化する。
感覚だけで「少し良くなった」と言うのではなく、どの根っ子が、どれだけ育ったかを数字で確かめる。
私たちは、家族一人ひとりの「心の根指数」を毎月測りました。
十点満点で、七つの根っ子の育ち具合を見ていきました。
三か月での家族の変化
これは、家族が急に別人になったという意味ではありません。
問題がすべて消えたという意味でもありません。
ただ、閉じていた心が、少しずつ開き始めた。
責め合いではなく、育て合う空気が生まれた。
その変化を、数字で確かめられるようになった。
それが、私たちにとって大きな希望でした。
つらいと言っていた息子も、数字の上では確かに伸びていました。
妻はこの時間を「つながり」と呼びました。
娘は「メンテナンス」と呼びました。
私は、その言葉を聞いて思いました。
家族会社に必要なのは、欠点を暴く診断ではない。
家族の心を安全に整える、定期的なメンテナンスなのだ、と。
もし、あなたの会社でも、親子が噛み合わないなら。
後継者に任せたいのに、任せきれないなら。
家族の中で、本音を言うと壊れそうで、黙っているなら。
私は、その苦しさが少し分かります。
だから、いきなり申し込みをしてくださいとは言いません。
診断を受けてくださいとも言いません。
ご家族を説得してくださいとも言いません。
まず、あなたが今、ひとりで抱えていることを、一行だけ書いてください。
「息子と話ができない」
「妻が間に入って苦しんでいる」
「後継者に任せるのが怖い」
「兄弟の関係がこじれている」
その程度で十分です。
うまく説明できなくても大丈夫です。
感情的な言葉でも構いません。
まとまっていなくても構いません。
私が、お返事します。
そこから先は、急ぎません。
文字のやり取りだけでも十分です。
話してもよいと思えたときに、はじめて声で。
必要だと思えたときに、はじめてお会いして。
一歩の大きさは、いつもあなたが決めてください。
この手紙を読んでも、「まだ早い」と感じるかもしれません。
それでも構いません。
ただ、これだけは覚えておいてください。
家族の問題は、家族を責めても解けません。
しかし、根っ子を見える化し、強みから育て直せば、もう一度つながり直す道はあります。
私たちは、その道を自分の家族で通りました。
そして、数字で確かめられる形にしました。
あの家族が抜けられたのなら、うちも抜けられるかもしれない。
そう思っていただけたなら、まず一行をお送りください。
根っ子診断「ROOTS7」
ご家族の承継と再生の伴走
ファミリービジネス研究所 / 承継問題研究所
