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ロッキー藤井の失敗劇場 ⑭

子どもを会社に入れないと決めた。
本当の原因は、創業時代にあった。

何度倒れても、また立ち上がる。ロッキー藤井です。
経営者の皆さまへ | ロッキー藤井 | 根っ子学®創始者
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失敗から生まれた「根っ子の視点」を、次号もお届けします
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何度倒れても、また立ち上がる。
ロッキー藤井です。
私は長い間、
「自分の子どもたちを会社に入れよう」
とは考えていませんでした。
まして、
「将来、お前が会社を継げ」
などと、一度も言ったことがありません。
子どもには子どもの人生がある。
自分の道は、自分で切り拓けばいい。
私はそう考えていました。
でも、最近になって自分の根っ子を掘ってみると、
「なぜ私は、そう考えるようになったのだろう?」
という疑問が出てきました。
その答えは、子どもたちが生まれた後ではありませんでした。
もっと昔。
私が会社を創業した頃まで遡ったのです。
第1幕 家族と仕事をする難しさを、私は早くから知っていた
私は27歳で独立しました。
創業当初から、家族には本当に助けてもらいました。
両親。
祖父。
義母。
この人たちとは、仕事の上でも非常にうまくいきました。
ところが――。
弟が会社に加わると、事情が違いました。
仕事になると、弟と私の意見が食い違う。
私も譲らない。
弟も譲らない。
そして、そのたびに間へ入ったのが、お袋でした。
兄と弟の間に立って、何とか二人を収めようとする。
しかし、またぶつかる。
また、お袋が仲裁する。
私は会社を良くしようとして弟と議論していたつもりでした。
弟にも弟なりの考えがあったはずです。
しかし結果として、
一番悲しませたのは、お袋だったのです。
そして最後には、弟の方から会社を出て行きました。
これは私の中に、かなり強く残りました。
普通の社員なら、退職すれば雇用関係は終わります。
しかし、弟は会社を辞めても、弟です。
お袋は、会社を辞めても、二人の母親です。
仕事上の衝突が、そのまま家族の中へ入ってくる。
私は創業の早い段階で、それを経験しました。
第2幕 一緒に創業した家内とも、仕事ではぶつかった
さらに、家内との関係です。
私たちは一緒に会社を立ち上げました。
家庭では夫婦です。
しかし仕事になると、意見の違いが何度も出てきました。
私は自分の考えを曲げない。
家内にも家内の考えがある。
一時は私から、「仕事から離れて、主婦業に専念してほしい」と頼んだことまでありました。
実際には、そうはなりませんでした。
今振り返れば、祖父、両親、義母とはうまくいった。
しかし、弟とは衝突した。
家内とも仕事では意見が合わなかった。
そんな経験が積み重なって、
私の中に一つの考えが根を張っていったのではないかと思います。
「家族と一緒に仕事をするのは難しい。」
第3幕 だから私は、子どもたちを会社に入れようと思わなかった
ここが、今になって初めて見えてきました。
私は最初から、「子どもは会社に入れない」という経営哲学を持っていたわけではありません。
過去の家族との仕事上の経験から、そう考えるようになったのです。
もし創業した頃、弟とも仕事がうまくいき、家内とも仕事上の衝突がほとんどなかったとしたら――。
私はたぶん、自分の意思で、最初から子どもたちを会社に入れていたと思います。
つまり、子どもたちについての判断なのに、その判断を作ったのは、子どもたちではなかった。
弟との経験。
家内との経験。
そして、兄弟の間に入って悲しそうにしていたお袋の姿。
何十年も前の出来事が、その後の私の家族経営に対する考え方を作っていたのです。
人生は面白いものです。
私は子どもたちに、「会社へ入れ」とも、「会社を継げ」とも言わなかった。
ところが結果的には、子どもたちは、それぞれ自分の意思で家業へ入ってきました。
そして最後には長男自身が、「会社を継がせて欲しい」と言ってきました。
私は一度も、「お前が継げ」と言っていません。
私が避けようとしていたファミリービジネスが、結果として私の人生の大きなテーマになったのです。皮肉なものです(笑)。
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第4幕 そこで、別の「根っ子」が動き始めた
ところが、ここから私はもう一つ間違えました。
子どもたちが会社へ入ると、今度は私の中に、「身内には、社員以上に厳しくするのが当たり前」という考えが出てきたのです。
会議でも、一般社員より子どもたちへ厳しく当たりました。
理由は、私なりには明確でした。
「社長の子どもだから甘やかされている」と社員から思われてはいけない。
経営者の身内なら、社員以上に頑張って当然。
私は、それが公平だと思っていました。
しかし今考えると、身内びいきを避けるために、逆方向へ振れすぎていたのかもしれません。
そして承継を終えてから、私は初めて知りました。
子どもたちは、私にずいぶん気を使っていた。
しかも、自分の気持ちを言わなかっただけではありません。
会社のために、本当は私へ伝えなければいけないことまで、伝えていなかったのです。

それを知ったとき、私は思いました。
もっと早く知りたかった。10年前に。20年前に。
第5幕 学術研究:藤井家だけの問題ではなかった
根っ子学を始めて、ファミリービジネスの研究を読むようになり、私は驚きました。
先代と後継者の関係やコミュニケーションは、世界でも重要な研究テーマになっています。
『Family Business Review』に掲載されたMichael-TsabariとWeissの研究では、創業者と後継者のコミュニケーションが不十分だと、たとえ両者の優先順位や考え、利害が一致していても、承継を妨げることがあると示されています。
研究者は、こうした状態を「communication traps」と呼んでいます。
つまり、「家族だから分かっている」では足りないのです。
むしろ家族だからこそ、言えない。聞けない。分かっているつもりになる。
ここにファミリービジネス特有の難しさがあるのだと思います。
第6幕 根っ子は、何十年も前にできていることがある
これが、今回私が自分自身から学んだことです。
目の前にある問題だけを見ていると、「息子が本音を言わない」「親子のコミュニケーションが悪い」「事業承継がうまくいかない」となります。
しかし、なぜ?を何度も繰り返していくと、ずっと昔の出来事まで戻ることがあります。
私の場合、創業時代の弟や家内との経験が、その後の私の家族経営観に影響していたのではないか。
そして、その根っ子の上に、「子どもは会社に入れない」という判断が生まれ、さらに子どもたちが会社へ入ると、「身内だから厳しくする」という別の判断が生まれた。私は今、そう考えています。
もちろん、これは私自身の人生を振り返った根っ子学としての解釈であって、研究によって証明された因果関係ではありません。
しかし、過去の体験が、現在の判断を動かしている。これは自分の人生を振り返るうえで、非常に大切な視点だと思っています。
今日、経営者のあなたに一つだけ質問します。

後継者を見ながら、「まだ任せられない」「息子には経営は向いていない」「娘には別の人生を歩ませたい」「身内は会社に入れない方がいい」そう考えている方もいるでしょう。もちろん、それが正しい場合もあります。

しかし一度だけ、自分自身に聞いてみてください。
その判断は、本当に目の前の後継者を見て決めたものですか?
それとも、10年前、20年前、30年前の家族との経験が、今もあなたの判断を動かしていませんか?
私は、自分の根っ子を掘って初めて、そこに気づきました。
事業承継は、株式や税金や役職だけの問題ではありません。
先代自身が、どんな家族の歴史を背負って、後継者を見ているのか。
そこまで掘らなければ見えない問題がある。私は今、そう考えています。
【読者の皆さんへ】 もし、
「自分の事業承継にも、過去の家族関係が影響しているかもしれない」
と思われた経営者の方は、このメールに、
「家族」 と一言だけ返信してください。

本当に困っている方だけで結構です。
目の前の問題だけではなく、その判断を生んだ根っ子まで、一緒に遡ってみます。

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何度倒れても、また立ち上がる。 ロッキー藤井
発行人 ロッキー藤井(藤井 薫)
「先代自身が、どんな家族の歴史を背負って後継者を見ているのか。そこまで掘らなければ見えない問題がある。」
株式会社大和製作所 創業者・根っ子学®創始者。約50年間の経営、家族、失敗、事業承継の経験から、人や会社を内側から動かす「見えない根っ子」を言葉と構造で見えるようにし、自然な成長につなげる研究と実践に取り組んでいます。
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