子どもを会社に入れないと決めた。 本当の原因は、創業時代にあった。
| 経営者の皆さまへ | ロッキー藤井 | 根っ子学®創始者 |
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失敗から生まれた「根っ子の視点」を、次号もお届けします
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私は長い間、 「自分の子どもたちを会社に入れよう」 とは考えていませんでした。
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まして、 「将来、お前が会社を継げ」 などと、一度も言ったことがありません。
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子どもには子どもの人生がある。 自分の道は、自分で切り拓けばいい。 私はそう考えていました。
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でも、最近になって自分の根っ子を掘ってみると、 「なぜ私は、そう考えるようになったのだろう?」 という疑問が出てきました。
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その答えは、子どもたちが生まれた後ではありませんでした。 もっと昔。 私が会社を創業した頃まで遡ったのです。
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| 第1幕 家族と仕事をする難しさを、私は早くから知っていた |
私は27歳で独立しました。 創業当初から、家族には本当に助けてもらいました。 両親。 祖父。 義母。 この人たちとは、仕事の上でも非常にうまくいきました。
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ところが――。 弟が会社に加わると、事情が違いました。
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仕事になると、弟と私の意見が食い違う。 私も譲らない。 弟も譲らない。 そして、そのたびに間へ入ったのが、お袋でした。
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兄と弟の間に立って、何とか二人を収めようとする。 しかし、またぶつかる。 また、お袋が仲裁する。
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私は会社を良くしようとして弟と議論していたつもりでした。 弟にも弟なりの考えがあったはずです。 しかし結果として、 一番悲しませたのは、お袋だったのです。
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そして最後には、弟の方から会社を出て行きました。 これは私の中に、かなり強く残りました。
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普通の社員なら、退職すれば雇用関係は終わります。 しかし、弟は会社を辞めても、弟です。 お袋は、会社を辞めても、二人の母親です。 仕事上の衝突が、そのまま家族の中へ入ってくる。 私は創業の早い段階で、それを経験しました。 |
| 第2幕 一緒に創業した家内とも、仕事ではぶつかった |
さらに、家内との関係です。 私たちは一緒に会社を立ち上げました。 家庭では夫婦です。 しかし仕事になると、意見の違いが何度も出てきました。
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私は自分の考えを曲げない。 家内にも家内の考えがある。 一時は私から、「仕事から離れて、主婦業に専念してほしい」と頼んだことまでありました。 実際には、そうはなりませんでした。
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今振り返れば、祖父、両親、義母とはうまくいった。 しかし、弟とは衝突した。 家内とも仕事では意見が合わなかった。
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そんな経験が積み重なって、 私の中に一つの考えが根を張っていったのではないかと思います。 「家族と一緒に仕事をするのは難しい。」 |
| 第3幕 だから私は、子どもたちを会社に入れようと思わなかった |
ここが、今になって初めて見えてきました。 私は最初から、「子どもは会社に入れない」という経営哲学を持っていたわけではありません。 過去の家族との仕事上の経験から、そう考えるようになったのです。
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もし創業した頃、弟とも仕事がうまくいき、家内とも仕事上の衝突がほとんどなかったとしたら――。 私はたぶん、自分の意思で、最初から子どもたちを会社に入れていたと思います。
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つまり、子どもたちについての判断なのに、その判断を作ったのは、子どもたちではなかった。 弟との経験。 家内との経験。 そして、兄弟の間に入って悲しそうにしていたお袋の姿。 何十年も前の出来事が、その後の私の家族経営に対する考え方を作っていたのです。
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人生は面白いものです。 私は子どもたちに、「会社へ入れ」とも、「会社を継げ」とも言わなかった。 ところが結果的には、子どもたちは、それぞれ自分の意思で家業へ入ってきました。 そして最後には長男自身が、「会社を継がせて欲しい」と言ってきました。
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私は一度も、「お前が継げ」と言っていません。 私が避けようとしていたファミリービジネスが、結果として私の人生の大きなテーマになったのです。皮肉なものです(笑)。
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ところが、ここから私はもう一つ間違えました。 子どもたちが会社へ入ると、今度は私の中に、「身内には、社員以上に厳しくするのが当たり前」という考えが出てきたのです。
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会議でも、一般社員より子どもたちへ厳しく当たりました。 理由は、私なりには明確でした。 「社長の子どもだから甘やかされている」と社員から思われてはいけない。 経営者の身内なら、社員以上に頑張って当然。 私は、それが公平だと思っていました。
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しかし今考えると、身内びいきを避けるために、逆方向へ振れすぎていたのかもしれません。
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そして承継を終えてから、私は初めて知りました。 子どもたちは、私にずいぶん気を使っていた。 しかも、自分の気持ちを言わなかっただけではありません。 会社のために、本当は私へ伝えなければいけないことまで、伝えていなかったのです。
それを知ったとき、私は思いました。 もっと早く知りたかった。10年前に。20年前に。 |
根っ子学を始めて、ファミリービジネスの研究を読むようになり、私は驚きました。 先代と後継者の関係やコミュニケーションは、世界でも重要な研究テーマになっています。
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『Family Business Review』に掲載されたMichael-TsabariとWeissの研究では、創業者と後継者のコミュニケーションが不十分だと、たとえ両者の優先順位や考え、利害が一致していても、承継を妨げることがあると示されています。 研究者は、こうした状態を「communication traps」と呼んでいます。
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つまり、「家族だから分かっている」では足りないのです。 むしろ家族だからこそ、言えない。聞けない。分かっているつもりになる。 ここにファミリービジネス特有の難しさがあるのだと思います。 |
| 第6幕 根っ子は、何十年も前にできていることがある |
これが、今回私が自分自身から学んだことです。 目の前にある問題だけを見ていると、「息子が本音を言わない」「親子のコミュニケーションが悪い」「事業承継がうまくいかない」となります。 しかし、なぜ?を何度も繰り返していくと、ずっと昔の出来事まで戻ることがあります。
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私の場合、創業時代の弟や家内との経験が、その後の私の家族経営観に影響していたのではないか。 そして、その根っ子の上に、「子どもは会社に入れない」という判断が生まれ、さらに子どもたちが会社へ入ると、「身内だから厳しくする」という別の判断が生まれた。私は今、そう考えています。
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もちろん、これは私自身の人生を振り返った根っ子学としての解釈であって、研究によって証明された因果関係ではありません。 しかし、過去の体験が、現在の判断を動かしている。これは自分の人生を振り返るうえで、非常に大切な視点だと思っています。
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今日、経営者のあなたに一つだけ質問します。
後継者を見ながら、「まだ任せられない」「息子には経営は向いていない」「娘には別の人生を歩ませたい」「身内は会社に入れない方がいい」そう考えている方もいるでしょう。もちろん、それが正しい場合もあります。
しかし一度だけ、自分自身に聞いてみてください。 その判断は、本当に目の前の後継者を見て決めたものですか? それとも、10年前、20年前、30年前の家族との経験が、今もあなたの判断を動かしていませんか? |
私は、自分の根っ子を掘って初めて、そこに気づきました。 事業承継は、株式や税金や役職だけの問題ではありません。 先代自身が、どんな家族の歴史を背負って、後継者を見ているのか。 そこまで掘らなければ見えない問題がある。私は今、そう考えています。
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【読者の皆さんへ】 もし、 「自分の事業承継にも、過去の家族関係が影響しているかもしれない」 と思われた経営者の方は、このメールに、 「家族」 と一言だけ返信してください。
本当に困っている方だけで結構です。 目の前の問題だけではなく、その判断を生んだ根っ子まで、一緒に遡ってみます。
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発行人 ロッキー藤井(藤井 薫)
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「先代自身が、どんな家族の歴史を背負って後継者を見ているのか。そこまで掘らなければ見えない問題がある。」
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株式会社大和製作所 創業者・根っ子学®創始者。約50年間の経営、家族、失敗、事業承継の経験から、人や会社を内側から動かす「見えない根っ子」を言葉と構造で見えるようにし、自然な成長につなげる研究と実践に取り組んでいます。
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