ロッキー藤井の根っ子相談室 息子に継がせたいが、本人にやる気がない
継がせたい親 vs 継ぎたくない子 ——69歳・飲食業、大石さんの場合(仮名)
この問題に正解はありません。
ただし、“壊れる決断”と“続く決断”はあります。
はじめに
50年間事業をやってきて、
私が最も多く見てきた承継の悩みの一つが、このケースです。
「親は継がせたい。
でも、息子にはやる気がない」
これは、単なる親子喧嘩ではありません。
事業承継の現場では、
この一言の裏に、
50年の苦労
親の期待
子の恐れ
時代の変化
事業そのものの魅力
そのすべてが絡んでいます。
今日もまた、
その問いを抱えた経営者が訪ねてきました。
大石さんの苦悩
大石さんは、地方都市で飲食業を営んで40年以上。
大きく儲かる商売ではないけれど、
地元では知られた店を築いてきました。
家族を養い、子どもを育て、
お客様にも支えられながら、ここまで来た。
だからこそ、
心のどこかでこう思っていたのです。
「できれば息子に継いでほしい」
ところが、息子は乗ってこない。
何度話しても、反応が鈍い。
手伝いはしても、本気ではない。
将来の話になると、話題をそらす。
大石さんは言いました。
「親としては、残したいんです。
でも、本人にその気がない。
無理に押したら壊れそうだし、
押さなかったらこの店は終わる気がするんです」
息子が継ぎたがらない理由
私はこの手の相談を何度も見てきました。
息子さんが継ぎたくない理由は、だいたい次のどれかです。
その事業が、息子にとって魅力ある仕事に見えていない。
親が苦労している姿を見てきて、「自分はあんな生き方はしたくない」と思っている。
そもそも親の仕事に興味がなく、自分の進みたい道が別にある。
事業が時流に合わなくなっていて、「今さら継いでも無理だ」と感じている。
内心は少し継ぎたい気持ちがあっても、親のようにはできないと怖れている。
ここで大事なのは、
「やる気がない=怠けている」ではない
ということです。
多くの場合、
そこには不安や恐れや、言葉にならない重さがあります。
本当の問題
大石さんに私はこう伝えました。
この問題は、
「息子に責任感があるかどうか」ではありません。
本当の問題は、
「息子が継ぎたいと思える根っ子の状態になっているか」
そこなのです。
親が見落としやすいこと
親はよくこう言います。
「こんなに苦労して残してきたのに」
「ここまで育ててやったのに」
「誰のためにやってきたと思っているんだ」
その気持ちは、よくわかります。
でも、子どもから見えている景色は違うことがある。
親にとっては「誇り」でも、
子にとっては「重荷」になっていることがある。
親にとっては「守ってきた店」でも、
子にとっては「自由を奪うもの」に見えていることもある。
問いを変える
だから、ここで問いを変えなければいけません。
「どうしたら継がせられるか」ではない。
「なぜ、この子は継ぎたいと思えないのか」
ここを見ないと、承継は前に進みません。
反対に、頼まなくても継ぐ子がいる
一方で、頼まないのに
息子や娘が自分の意志で入社し、
立派に後継ぎをこなしている事例もあります。
たとえば、ある老舗の蕎麦店では、
娘さんが屋号を受け継ぎ、
大都市の繁華街で大きな蕎麦店を開いて成功しました。
娘婿は経営者タイプで、
蕎麦店だけでなく不動産業まで広げ、
事業として大きく発展させています。
この経営者夫婦には、2人の娘がいて、2人とも蕎麦店を手伝い、
おまけに娘婿たちも競って、蕎麦店の運営に力を入れています。
また別の例では、
地方都市で40年間、うどん店を経営してきた父親が、
先細りを見て廃業を決意した。
ところが結婚していた娘さんが、
「自分たちを育ててくれた店を、このまま終わらせたくない」
と立ち上がった。
学び直し、今の時代に合う店に作り変え、
以前より繁盛させたのです。
何が違うのか
この違いは何か。
私は、こう見ています。
継ぐ・継がないの違いは、能力より先に“意味”の違いです。
その事業が、
誇りを感じられるものか
自分の人生を賭ける意味があるか
自分らしく変えていける余地があるか
そこが見えている子は、
頼まれなくても動きます。
逆にそこが見えない子は、
無理に押しても動きません。
私の診断
大石さんの息子さんは、
おそらく「やる気がない」のではありません。
まだ、自分の根っ子とこの事業がつながっていないのです。
つまり問題は、
意思の弱さではなく、
接続不良です。
親の思いと、
子の人生が、
まだつながっていない。
どうするか
ここでやってはいけないのは、
根性論です。
親なんだから言うことを聞け
家を守るのは当然だ
継がないのは親不孝だ
こういう言い方をすると、
一時的に黙ることはあっても、
根っ子は離れていきます。
必要なのは逆です。
息子の本音を、責めずに聞くこと。
何が嫌なのか
何が怖いのか
何ならやってみたいのか
今の店のどこに未来が見えないのか
ここを聞くことです。
承継の本質
承継とは、
ただ店を渡すことではありません。
「この仕事には生きる意味がある」と
次の世代が感じられる形に変えて渡すことです。
そのまま渡すだけでは、
継承ではなく押し付けになります。
私から大石さんへの答え
私は大石さんに、こう伝えました。
まず、継がせることを急がないでください。
急ぐべきは、
息子の返事ではありません。
息子がこの事業をどう見ているかを知ることです。
そしてもし、
本人が本当に望まないのなら、
無理に継がせないことです。
無理に継がせた事業は、
たいてい途中で壊れます。
もう一つの可能性
ただし、そこで終わりではありません。
息子が継がないなら、
娘はどうか
娘婿はどうか
番頭はどうか
外部承継はどうか
小さくして残す道はないか
考えるべき道は、いくつもあります。
後継問題ではなく、配置問題です
ここで大事な一行をお伝えします。
後継問題ではなく、配置問題です。
誰に継がせるか、だけではない。
誰が何を担えば、その事業の根っ子が最も活きるのか。
そこを見ることです。
実践アクションプラン
- 最後の問い
- 大石さんに最後に、こう伝えました。
- 「あなたは、息子に何を継いでほしいのですか」
- 店ですか。
- 苦労ですか。
- 看板ですか。
- それとも、あなたの生き方ですか。
- この問いが見えたとき、
- 親の押しつけは、願いに変わります。
- あなたへ
- もし今、
- 息子に継いでほしいが、その気がない
- 無理に言えば壊れそうで怖い
- 何から話せばいいかわからない
- そんな状態なら、
- まず「継ぐか継がないか」を迫る前に、
- なぜ継ぎたくないのか
- を、静かに聞いてみてください。
- そこに、次の道の入口があります。
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