事業承継

ロッキー藤井の根っ子相談室 「20年来の番頭が、突然辞めると言ってきた」)

承継で本当に問うべきは ——58歳・小売業、佐藤さんの場合(仮名『誰が長男か』ではなく、『誰が会社の根っ子を守れるか』です。

はじめに

今日、一人の経営者が訪ねてきた。

58歳。地方都市で創業25年、小売業を動かしてきた人だ。

表情が固い。

声が低い。

絞り出すように言った。

「20年来の番頭が、突然辞めると言ってきました。

部下4人を連れて」

私は、その言葉をそのまま受け取った。

20年という時間の重さと、突然という言葉の鋭さが、一緒に飛んできた。

佐藤さんからの言葉

大学を卒業して、11年間、都会の上場デパートで外商の仕事をやっていました。

仕事が面白くて、11年があっという間でした。

そんな頃、親父の体調が悪くなり、両親に懇願されて地元に戻ることにしました。

帰りたくはなかった。

でも、身軽だったし、両親の思いが強かった。

地元に戻り、取引先の後押しを受けて創業しました。

最初は寝る間もなく働いた。

最初の5年間は、何度もやらなかった方が良かったと後悔した。

それでも、徐々に信用がつき、軌道に乗り始めた頃、今の家内と出会い、結婚した。

子どもにも恵まれ、両親と一緒に暮らし、親孝行もできた。

親戚中からも羨ましがられた。

そして創業5年後に入社したのが、今回辞めると言ってきた専務です。

20年間、片腕として信頼してきました。

経営の判断も、現場の采配も、すべて相談し、任せてきた。

この人がいなければ、今の会社はなかったとさえ思っている。

それが昨日、突然、部下4人の辞表をまとめて持ってきた。

20年間、信じて一緒にやってきた。

今、なぜなのか。

しかも部下を連れて辞めるということは、ライバルになるのが目に見えている。

25年かけて築いてきた地盤を、まるごと持っていかれるかもしれない。

裏切られたという怒りより、恐怖の方が大きい。

何が間違っていたのか。

どこで歯車が狂ったのか。

自分自身が、わからなくなっています。

——佐藤(58歳・小売業経営者)※仮名

ロッキー藤井から、佐藤さんへ

佐藤さん、昨日の今日で、よく来てくれました。

その恐怖、よくわかります。

私にも、まったく同じ経験があった。

ある部門で人が不足したとき、大企業出身でIターンしてきた優秀な人材を採用した。

仕事ができた。

みるみる昇進した。

私との関係も非常に良かった。

ところが、古参の他部門の部長たちとうまくいかなかった。

何度もぶつかり、そのたびに私が間に入った。

そんなある日、私が外で仕事をしていると、本人が出先まで来た。

部下3人分の辞表を一緒に持って。

多分、本人は、私が必ず引き留めると思っていた。

しかし私は、一切引き留めなかった。

その場で辞表を受け取り、退職日まで出社しなくていいと伝えた。

その瞬間は、正直、怖かった。

その部門から一気に4名が抜ける。

業務が回らなくなる。そう思った。

でも、私が引き留めなかったのには理由がある。

佐藤さん、ここを聞いてほしい。

番頭が辞める。

それは番頭の根っ子の問題だけじゃない。

20年間一緒にやってきて、なぜ今なのか。

なぜ話し合いではなく、辞表という形になったのか。

そこには、二人の根っ子のすれ違いが、長い時間をかけて積み重なってきた歴史がある。

番頭さんの根っ子に、何かが溜まっていた。

それを吐き出す場所が、なかったのかもしれない。

佐藤さんへの信頼が深かったからこそ、言えなかったのかもしれない。

20年間、片腕として任されてきた重さが、ある日限界を超えたのかもしれない。

私の場合はどうだったか。

辞めてもらって、最初は確かに困った。

でもいろんな手を使って、その穴を埋めた。

日本人だけでは足りなかったから、外国人にも来てもらった。

結果として、その部門はすぐに回復した。

そして今は、辞めてもらって良かったと思っている。

佐藤さん、ライバルになる恐怖はわかる。

でも今、一番大切なのはそこじゃない。

25年かけて築いてきた佐藤さんの根っ子は、一人の番頭が去ったくらいで揺らぐものじゃない。

地域の信頼、家族の支え、取引先との絆——それはすべて、佐藤さん自身の根っ子から生まれてきたものだ。

番頭さんが持っていけるのは、技術や人脈の一部かもしれない。

でも佐藤さんの根っ子は、持っていけない。

今すべきことは一つだ。

番頭さんが去った理由を、怒りや恐怖ではなく、冷静に見つめること。

そこに、佐藤さん自身の根っ子を育てる次のヒントが必ずある。

人が去るとき、根っ子は深まる機会をくれている。

そう私は信じている。

あなたへ

信頼していた人間に、突然去られた経験がある人は少なくないはずです。

そのとき多くの人は、相手を責めるか、自分を責めるか、どちらかに向かいます。

でも本当に問うべきは、その間にある根っ子のすれ違いです。

長く一緒にいた人ほど、言えなくなっていることがある。

任せている人ほど、孤独になっていることがある。

信頼しているつもりが、相手には重荷になっていることがある。

それは誰かが悪いのではない。

根っ子のすれ違いが、時間をかけて積み重なった結果です。

大切な人が去ったとき、怒りや恐怖の奥にある根っ子を見てみてください。

そこに、次の根っ子が育つ土壌があります。

コメントでも、直接メッセージでも構いません。

あなたの根っ子の話を、私はちゃんと読みます。

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