事業承継

ロッキー藤井の根っ子相談室 承継で失敗する経営者と、脱皮できる経営者——何が違うのか

77歳、私自身の承継から見えたこと

はじめに

この問題に正解はありません。

ただし、決断には三つあります。

"壊れる決断" "続く決断" そして——"飛躍の決断"です。

今日は、二人の経営者の話をします。

一人は30年来の知人、片山さん(仮名・77歳・電気製品製造業)。

もう一人は、私自身です。

片山さんは会社を売却し、こう言いました。

「やることがなくなってしまった」

私はほぼ完全に退き、今、第三の天職を生きています。

同じ「手放す」という行為が、なぜここまで違う結果を生むのか。

その答えが、多くの経営者への警告になると思い、ここに書きます。

片山さんに何が起きたのか

片山さんには娘さんが2人いましたが、どちらも会社経営に興味がない。

長年会社を支えてきた番頭格の社員に「継がないか」と声をかけた。

しかし、誰も手を挙げなかった。

会社は悪くなかった。

社員数は10数名、年間3000万円の利益が出ていた。

それでも誰も継がない。

そこで片山さんはM&A専門会社に相談し、売却を決めた。

売却後、片山さんが私を訪ねてきたとき、

その姿は以前とまったく違っていました。

元気がない。覇気がない。

「会社に入ることもできない。鍵も持っていない。社用車にも乗れない」

40年間、手塩にかけて育てた会社が、

完全に他人のものになっていた。

お金は手に入ったかもしれない。

しかし、人生の拠り所を失ってしまっていた。

本当の問題は何だったのか

片山さんの問題は、

売却が良かったか悪かったか——ではありません。

本当の問題は「根っ子をどうするかを決めずに手放したこと」です。

会社とは単なる事業ではありません。

40年の時間、社員との関係、お客様との信頼、自分の人生そのもの

——それらすべてが積み重なったものです。

それが会社の根っ子です。

片山さんには、一つの問いが抜けていました。

「この会社の根っ子を、どう残すのか」

誰に継がせるか、売るかどうか

——その前に考えるべきだったのは、そこです。

欧米の老舗が100年かけて出した「答え」

後継者がいないとき、

「売却」だけが選択肢ではありません。

欧州や北米で100年以上続く老舗のファミリービジネスは、

すでに一つの答えを出しています。

「所有(資本)と経営の分離」です。

血縁者が必ずしも「社長」になる必要はない。

血縁者はオーナー(資本家)として

一族の理念と根っ子を守る「番人」に徹し、

実務のトップには番頭や外部のプロ経営者を据える。

この構図では、創業者は「会社を手放す」のではありません。

「経営を手放し、根っ子の番人になる」のです。

片山さんのケースで言えば

——番頭格の社員が「社長にはなりたくない」と言ったとしても、

それは「経営責任を負いたくない」という意味だったかもしれない。

「オーナーが守り、プロが動かす」という構図を提示していたら、

答えは変わっていたかもしれない。

売却とは、根っ子ごと手放すことです。

しかし欧米の老舗が示した道は——

根っ子だけは手放さない、という選択でした。

これこそが、現代における徳川の「続く構造」です。

私自身の承継——なぜ「退けた」のか

最近、30年来の知人から電話がありました。

「あんなに取り組んできたのに、そんなにすっぱり身を引けたもんだ。感心する」

私はその言葉を聞いて、少し考えました。

なぜ退けたのか

——正直に言えば、退く前に一つのことに気づいたからです。

1年前、私は長男に会社を完全に譲り渡し、今はほぼ完全に退いています。

しかし、片山さんとの違いは何だったのか。

譲渡後、私は回顧録を書きました。

書いているうちに、自分の根っ子と向き合うことになった。

祖父から受け継いだ癇癪玉の根っ子が、

長年、家族とのコミュニケーションを妨げていたこと。

承継がぎくしゃくした原因も、そこにあった。

それが見えた瞬間、その根っ子は消えた。

消えると同時に、退くことへの恐れも消えました。

承継を阻むのは、後継者の問題だけではありません。

実は、自分の中の根っ子が、

手放せない最大の原因であることが多い。

私はその後、根っ子の研究に打ち込み、

今それが第三の天職になっています。

会社を譲ったことで失ったものはない。

むしろ、新しい根っ子の季節が始まりました。

承継とは「脱皮」である

多くの経営者は、承継を「守る作業」として考えます。

「誰に渡すか」「どう守るか」

——その視点だけで考える。

しかし本来、承継は違います。

会社にとっての「脱皮」のタイミングです。

創業者は、0を1にしてきた。

しかしその先、1を10にし、100にし、1000にしていく仕事は、

次の世代に託されている。

承継とは、椅子を渡すことではない。

未来を渡すことです。

そして、手放した創業者には新しい役割がある。

根っ子の番人として、会社の土台を守り続けること。

それが欧米の老舗が証明した、もう一つの天職です。

一番大事な一行

承継を「誰に渡すか」で考えると、必ず後悔が残る。

「根っ子をどう残すか」で考えると、次の扉が開く。

片山さんの姿が、私にそれを教えてくれました。

実践アクションプラン

  1. 経営者への問い
  2. あなたは今、承継をどう捉えていますか。
  3. 「守る」作業として考えているか。
  4. それとも——
  5. 「脱皮」のチャンスとして捉えているか。
  6. その問いへの答えが、あなたの承継を決めます。
  7. 承継とは、継いで終わりではありません。
  8. 会社を進化させる"脱皮"であり、
  9. 根っ子を守りながら、自分自身の次の天職へ踏み出すことです。

後継者問題を、一度整理しませんか

同じように迷っているなら、一人で抱え込まないでください。 後継者がいない、誰も継ぎたがらない 売却しか選択肢が見えない 手放すことへの恐れが止まらない この決断でいいのか、誰かに確かめたい コメントでも、メッセージでも構いません。 あなたの状況を聞かせてください。

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